受賞インタビュー
理事長 森岡 隆人
「Best Doctors in Japan」受賞
Best Doctors in Japan
受賞を受けて
素直に嬉しいです。Best Doctorは2年に一回選ばれるのですが、2012年からの10年間、すなわち5回連続して選ばれています。今回で6回目、すなわち10年を越えて選ばれ続けられたことは、素直に嬉しいですし、今までご指導いただいた皆様に感謝したいと思います。
私は、九州大学脳神経外科に二年間のアメリカ留学を挟んで、20数年間在籍しました。この間、医者にとって、患者さんと直接接する「臨床」が最も大事であることは勿論ですが、その経験から学んだことを後世に残したり、また後輩に伝えること、すなわち「研究」と「教育」の重要性も学んできました。このことを少しでも実践できたことをご評価いただいての受賞と思いますので、今後もこのスタンスを継続したいと思います。
Best doctorsとは
“Best Doctors in Japan”とは、医師に対して「自身または家族の治療を、自分以外の誰に委ねるか」という質問を行い、同じ専門分野の他の医師の評価をアンケートすることで進められ、最終的に調査結果から一定以上の評価を得た医師のみが”Best Doctors in Japan”として認定されます。
てんかんについて
てんかんとは
ヒトの脳はいろいろな活動をしますが、それらはすべて脳に静かな電気活動が起こっています。例えば、右手を動かせという命令を伝えるためには、反対の左脳の前頭葉にある運動野に電気活動が起こり、その電気信号が右手に伝わって、右手が動きます。それらは電気的に制御された、静かな電気です。それが、制御されない大きな電気が突然発作性に生じることによって起こる現象をてんかんと言います。ですから、大きな電気現象が起こる部位や拡がり、また大きさでてんかんの症状は異なります。例えば、左脳の運動野に大きな電気活動が起こると、右手のけいれんという症状が起こります。この電気活動がさらに脳全体に拡がると、意識を完全に消失して、両手足のけいれんになります。
専門研究を始めた理由
私は、大学を卒業して5年目に、九州大学大学院にある臨床神経生理講座に進学し、この中枢神経における電気生理学を研究しました。脳外科医が取り扱う脳卒中や頭部外傷で、中枢神経が傷害されると、その機能は低下します。すなわち、電気は流れにくくなったり、まったく流れなくなります。一方で、てんかんはその反対に過剰な電気が流れるという状態に非常に興味をもちました。
ちょうどその頃、MRIや脳波の進歩により、いままで原因不明と言われていたてんかんにも様々な原因があることが明らかになりました。これに対してその原因、すなわちてんかん発作の震源地ともいわれる部位を、脳外科手術で切除することにより、発作を起こらなくするという「てんかん外科手術」の有用性が明らかになってきました。
このてんかん外科手術を、神経内科や小児科の先生達と一緒に、九州大学病院で立ち上げることに参加出来たことは、私の人生のなかで一番の宝になっています。このことをご評価していただき、昨年、第12回日本てんかん学会学会功労賞をいただきました。この場をお借りして、関係各位の皆様に深謝したいと思います。
今後の取り組み・研究について
てんかんの診療には、専門的な知識と経験が必要です。そのため、日本てんかん学会では専門医制度を制定しています。また、てんかん診療にもっとも重要な役割をはたす脳波の判読にも、専門的な知識と経験を要するため、日本神経生理学会では同様に専門医制度を制定しています。今後も、今までの経験と知識を生かし、宗像・福津・遠賀地区におけるてんかん診療の益々の発達に貢献したいと考えています。
医師として
私が大切にしていること
脳外科の対象となる疾患は、中枢神経の疾患ですので、患者さんの命や、その後のquality of lifeに大きく係わるものばかりです。”Best Doctors in Japan”の選考基準の原点である「自身または家族の治療を、自分以外の誰に委ねるか」とまったく同じで、「自身または家族であれば、どのような治療を考えるか」ということを第一に考えて、診療にあたっていきたいと考えています。
蜂須賀病院への思い
初代理事長の故蜂須賀庄次先生と、二代目理事長の故江崎正孝先生には、昭和58年に当院が蜂須賀脳神経外科医院として開設された当初から、公私にわたりご指導をいただきました。今までの経験を活かし、さらには両先生のご遺志を引き継いで、宗像・福津・遠賀地区における脳神経外科・整形外科の急性期専門病院として、今後も地域の皆様のご要望にお応えできる病院を目指して頑張りたいと思います。